電車での帰り道、おれはいつものように、カバンのなかに忍ばせたチューイングキャンデー「かむかむレモン」をこころゆくまで味わっていた。おいしい。ちょうおいしい。「かむかむグレープフルーツ」もなかなかおいしいけれど、「かむかむレモン」の酸味の効きすぎた感がある味が、おれは好きだ。
その「かむかむレモン」のパッケージをじーっと眺めてると、だんだん、「かむかむ」の「む」の字が不思議に思えてきた。「む」って字、こんな形だったっけかな。「む」って、変なかたちだよ、よく見ると。ちょろちょろーって、なんか丸まってるところが微妙だし、毛虫みたいに下のピョローって伸びたところも、なんかおかしい。だいいち、右上の「`」はなんだろう。よくわかんないよ、その点。スペース余ったから、なんか書いとけ的なあれですか。見ればみるほど、こんなへんてこな字、ほんとうにおれは知っていたのだろうか、というような気持ちになる。
こういう、普段当たり前のように使っていたのに、よーく見ると、不思議に思ったり新鮮に思うことがよくある。これは、字だけじゃない。ものや、人や、出来事も、たまには難しく考えずによーくみて、違和感を感じるのもいいことかもしれない。