六年

この町に住んで、もう六年が経つ。
六年間で変わったことといえば、貯金が増えたことと、車の免許をとったことくらいで。あとは、なんだ。髪がけっこう伸びたかな。変わってないか、そんな。でも、知らないうちにきっと、変わっていったものも沢山ある。
むこうにいたとき通っていた高校は、来年の新入生を最後に、廃校になるらしい。どこかの高校と合併すると聞いた。その高校の前の見晴らしのいい空き地には、今はもう、高層マンションや大型スーパーが建っていて、すでに違う街だった。最寄の駅の高架下には、おれには思い出のないマクドナルドとミスタードーナッツが新しく入っていて、ぽっちゃり小学生が美味しくなさそうにハンバーガーを食べていた。知らない間に先輩は東京から帰ってきていて、知らない間にあの子は夢をあきらめていて、知らない間にあいつに彼女ができてて、トロンボーンを吹いてた友人がいつの間にかベース弾きになっていて、いつの間にか友人は一人暮らしをはじめて、新しくできたラーメン屋さんに行って、知らない味を食べて、知らない新しい話をする。
変わらないこととか、変わったこととか。少し、ちょっと前を思い出してみると、こう、ぼんやり見えてきて、なんだか切なくなる。昔のことが、悲しいくらいきれいに見える。悲しいことでも、悪いことでもないんだけれどもね。なんかさ、変わるやんなぁって。なるやん。なるねん。おれはやっぱり、六年前が大好きで、で、それと同じくらい今も大好きです。
来月、帰ります。