ナービー

暑さとか、蝉の声とか、プールの底にうつるゆらゆら揺れる光とか、緑とか、夏の夜のにおいとか、花火の切なさとか、バニラアイスの食べ残しとか、きれいな色の着物とか、アスファルトとか、額の汗とか、ばかみたいに遠い星とか、夏のあいだに思ったことは、凄まじい勢いで通り過ぎた台風に、ぜんぶ持っていかれたんじゃないだろうか。
何か残っていないかと、こおろぎが鳴いとるよ。